NICUに入院した双子と過ごす中で、私が想像以上に大変だったことのひとつが「搾乳と授乳」でした。

赤ちゃんが生まれたら、当たり前のように授乳するものだと思っていた私にとって、「NICUではすぐに直接授乳できない」という現実は、戸惑いと不安の連続でした。

母乳が出ない焦り、足りているのか分からない不安。そんな時に工夫したことや気付いたことについて、当時を振り返りながらまとめました。

同じように、NICUで授乳や搾乳について悩んでいる方の心が少しでも軽くなれば幸いです。

この記事でわかること

  • NICU入院中に、赤ちゃんへすぐに直接授乳ができない理由について
  • 搾乳中心の生活で感じた不安や葛藤、母乳との向き合い方について
  • 母乳・ミルクを含めた「無理をしない授乳の選択」と、心が楽になった考え方について

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すぐに授乳できない現実

早産・低出生体重児への直接授乳が難しい理由

直接授乳が難しいのは、赤ちゃんの吸う力・嚥下・呼吸の協調が未熟で、力も弱いためです。また、治療上の理由や母体の身体的準備が整っていない場合にも難しくなります。

特にNICUに入院している場合は、赤ちゃんが保育器に入っていたり、呼吸のサポートをしていると、直接授乳が難しいです。

「母乳はどうやってあげるの?」という最初の疑問

直接授乳できない場合、どうやって授乳するんだろう?と思っていました。

一般的に修正34週以降に直接授乳が可能になることが多いですが、直接吸うことができない間は、母親が搾乳した母乳やミルクを、鼻から胃へ通したチューブで与えます。

吸わせてあげられないことへの戸惑いと不安

はじめ、チューブに母乳が入ったシリンジをつないでいるのを見た時は、正直少し戸惑いました。そして、母乳を胃へ送っている間、自分は何もできずじっとしているしかないことが母親として悲しかったです。

「直接吸わせてあげたい。でも、今のあの子たちにはまだその力が無いからそれはできない…。」

仕方がないこととわかっていても、いつになれば自分が母乳やミルクをあげることができるのかわからず、不安でいっぱいだったことを覚えています。

搾乳生活がスタート

出産直後から始まった搾乳

早産かつ帝王切開だったため、ちゃんと母乳が出るのか心配でした。

実際には、出産方法に関わらず、産後に胎盤が剥がれればホルモンの影響で母乳は分泌されるようになります。なので、帝王切開だからといって母乳が出にくい(または出ない)ということはありません。

ただ、帝王切開の場合、術後の傷の痛みや身体の回復を優先するため、初期の授乳回数や時間が少なくなり、軌道に乗るのが遅れるケースがあると言われています

また、母乳は赤ちゃんに吸ってもらう刺激で出が良くなると言われているため、その点でも不安でした。

私は産後18時間後くらいに搾乳をスタートしました。看護師さんに指導してもらいながらやってみましたが、はじめは滲んでくる程度。どれだけ頑張っても1mlくらいしか取れず、泣きそうになりました。

でも看護師さんに、「これが普通ですよ!ママがダメなわけじゃ決してありませんからね。あまり思い詰めず、少しずついきましょうね。」と言われ、落ち着くことができました。

母乳の出かたは人それぞれ。出産方法や体質によっても違います。決して、「出ない自分がダメなんだ」とは思わないでくださいね。

3時間ごとに搾乳する日々

搾乳は、電動の機械を借りて3時間ごとにやりました。「とにかく刺激をすること」それが母乳の出を安定させるために大切なことでした。きっちりと3時間毎にする必要はありませんが、1日7〜8回こまめに刺激することで分泌が良くなることを看護師さんに教えてもらいました。

機械の準備をし、その後は乳房のマッサージをしてから搾乳をスタート。左右10分ずつで計20分の搾乳を終えると、搾乳を専用容器に移し、機械の片付けをしていました。1回の搾乳で、計40〜50分ほどかかっていたと思います。

その後は、搾乳を持ってNICUへ面会に。3時間ごとと言っても、次の搾乳まで休める時間は30分〜1時間ほどしかなく、術後の傷を抱えながらこのルーティーンをこなすのはなかなかしんどかったです。

体と心、どちらもしんどかった正直な気持ち

1人目の時に母乳育児を経験していたため、赤ちゃんに直接母乳を飲ませる大変さも理解しているつもりですが、私は搾乳も搾乳で辛くて大変だと感じました。

傷の痛み、搾乳でのお乳の痛み、細切れ睡眠によって身体的にも辛く、なかなか増えない母乳量、直接吸ってもらえない悲しみなどから心の面でもダメージが大きかったです。

同じ部屋の他のママさんが、たくさん搾乳できているのを見かけてしまい、「自分は全然出せない…」と落ち込んでしまったこともありました。今思えば、そのママさんも頑張って搾乳を続けて出るようになったのだと思いますが、当時の私はいろんなダメージから「私は母乳を出せないんだ」と、マイナスな方へ考えてしまっていました。

「母乳じゃなきゃダメ」と思い込んでいた自分

ミルク併用という選択

2人分の母乳を出すために必死に頑張っていましたが、搾乳量がなかなか増えず、不安な毎日でした。

母乳にはママの免疫が入っていて消化にも良いため、可能な限り母乳を飲ませてあげたいという想いがありました。しかし、いくら必要量が数ミリとはいえ、常に2人分の母乳を確保するのは難しかったです。

低出生体重児への授乳は、「母乳」しか選択肢がないわけではありません。例えば、ドナーミルク低出生体重児用ミルクなどがあります。

 ドナーミルクとは

基準を満たした女性から提供され、母乳バンクで殺菌処理・検査された「安全な他人の母乳」です。主に母乳が得られない極低出生体重児(1500g未満)の健康を守り、壊死性腸炎などの重篤な疾病を予防する栄養源として、NICUで利用されています。

 低出生体重児用ミルクとは

低体重で生まれた赤ちゃんのために、高エネルギー、高タンパク質、消化吸収の良さに配慮して調整された粉ミルクです。未熟な消化管に負担をかけず、効率的に成長を促すよう設計されています。

もちろん赤ちゃんのことは大切です。しかし、ママの身体がどうなってもいいわけではありません。辛い時や不安なときは、遠慮せずに看護師さんや医師に相談し、ドナーミルクや低出生体重児用ミルクを併用するのもひとつの選択肢です。

赤ちゃんの成長を最優先に考えるという視点

母乳は赤ちゃんにとって良いものですが、優先して考えるべきは赤ちゃんの成長です。母乳だけにこだわり過ぎてしまうと、赤ちゃんは栄養不足になり、それこそ命の危機に陥る可能性もあります。

実際私の双子の場合も、搾乳だけでは足りない時期があったため、低出生体重児用ミルクを併用した時もありました。また、産後すぐから点滴もしていて、そこから栄養剤も入れていました。

最優先に考えるのは、今の赤ちゃんにとって必要な治療や栄養。もちろん、母乳はそのピースのひとつとなりますが、それが全てではありません。総合的に判断することが大切だと思いました。

併用することで感じた心の変化

正直言うと、やはり母乳のみで育てたい気持ちは強かったです。しかし、それを赤ちゃんたちが望んでいるのか?と考えると、そうとは限らないのではないかと思いました。

あのまま、母乳が出ない自分を追い詰めてしまっていると、もっと精神的にまいっていたのではないかと思います。ミルクとの併用を受け入れられたことで、少しずつ苦しかった気持ちが緩んでいくのがわかり、心身ともにリラックスできることが増えました。その結果、母乳の出も安定してきました。

悩んだときや立ち止まったとき、1人でなんとかしようと思うことはありません。医療スタッフや家族とみんなで赤ちゃんのことを考えるのです。

私自身もこの経験を通して、1人で抱え込まない大切さを学ぶことができました。

母乳量を増やすためにした工夫

母乳以外にも選択肢があるとわかっていても、私はやはり「母乳はちゃんと飲ませたい」という気持ちが強かったため、看護師さんに、母乳の出をよくするためにはどうしたらいいのか?を相談しました。

その時に教えてもらった工夫がこちらです。

母乳の出を良くするためにできること

  • 水分をしっかりとる(1日2L以上)
  • 温かい飲み物を飲む
  • バランスの良い食事をする
  • 体を温める(ホットタオルなど)
  • 搾乳前に乳房のマッサージをする
  • リラックスすること

 

特に、水分を摂ることが重要だと教わりました。冷たい飲み物は体を冷やすので、常温か温かい飲み物を一気に飲むのではなく、こまめに飲むことが大切です。

また、退院後はなかなか自分のご飯に気を使えないと思いますが、難しい時は「具沢山の味噌汁」がおすすめだそうです。根菜や発酵食品は体を温める働きがあるからです。

そして、搾乳や授乳前に、首、肩、乳房の周りをホットタオルで温め、乳房のマッサージをすることで血流が良くなって、母乳の出が良くなります。

あとはリラックス。気持ちの問題は意外と大きく、ママが多くのストレスを抱えていると、母乳の分泌が妨げられます。

そして、搾乳や授乳は継続が大切です。焦らず、不安な時は医療スタッフや信頼できる家族や先輩ママさんに相談し、自分だけで痛みや辛さを抱え込まないようにしてくださいね。

母乳量=母親の価値のように感じてしまっていた

看護師さんに、母乳の出を良くする工夫を聞き、それを実行することで、少しずつですが搾乳量が増えてきました。その量を見て、涙が溢れたことを覚えています。それほど、私にとって搾乳は負担になっていたんだなと実感しました。

思えばずっと、「母乳量=母親の価値」のように感じてしまっていたのだと思います。でも、実際はそんなことありません。そう思っていたのは自分だけだったのです。子どもへの愛情は母乳が全てではないのです。

完璧じゃなくていいと思えた瞬間

搾乳量が少ない日もあった現実

日々搾乳を頑張ることで、その量も増えてきてはいましたが、毎回十分な量がとれるわけではありませんでした。

体調が崩れたり、退院後は面会や家事に追われて搾乳間隔がズレてしまい、搾乳量が少ない日があったこともあります。それでも、完璧を目指さず少しずつでも続けることで、2人ともNICUを退院する生後5ヶ月まで搾乳を継続することができました。その後も、生後7か月までミルクと混合ではありますが、母乳育児を続けられました。

直接授乳ができなくても、母であることは変わらない

生後11ヶ月から保育園に通う予定もあったため、生後8ヶ月からは完全にミルクのみにしましたが、あの搾乳と授乳に奮闘した日々は私にとって大事な宝物です。

確かに、苦しくて眠くて悲しい思い出もありますが、私の母乳が少しでも2人の成長に尽力できたかなと思うと、嬉しさや喜びもあります。それに、例え「母乳」というものが無かったからといって、私が母親でなくなるわけではありません。

本当に大切なのは、子の健康や幸せを願うこと。今、目の前の命を守ること。母乳はそのためのひとつの手段にしかすぎないのです。

NICUで学んだ「頑張りすぎない育児」

産後、約1000gの我が子を目の前にして、「この子たちのために頑張らないと」と思いました。

しかし、自分を犠牲にしてまで何もかも全力でやることが「頑張る」ことではないと、NICUでの日々で学びました。

ミルクも併用しながら、母乳を飲ませたいという希望も叶え、お互いに負担がかからないよう調整できたことで、自分の体調を整えてしっかりと2人の面会に集中することができました。

もし、「搾乳をしない」「ミルクのみにする」という選択をしたとしても、子どもや自分の身体のことを考えて出した選択ならそれも正解。

今後の育児も、きっと悩みや苦悩の連続だと想像しますが、何もかもママだけで頑張ることはありません。手間抜きしたっていい。もっと楽な方法を編み出していい。周りの人にどんどん頼っていい。

ひとりで抱え込まないことが、育児の秘訣だと思います。

今、同じ悩みを抱えるママに伝えたいこと

NICUでの搾乳や授乳は、想像以上に心と体をすり減らします。母乳が思うように出ないこと、直接吸わせてあげられないこと、周りと比べてしまうこと——どれも、悩んでしまうのは当たり前です。

でも、どうか覚えていてほしいのは、今あなたが感じているその不安や苦しさは、あなたが赤ちゃんを大切に思っている証だということ。

母乳の量が少なくても、途中でやめる選択をしても、あなたが赤ちゃんを想う気持ちが減るわけではありません。赤ちゃんにとって一番大切なのは、栄養だけでなく、ママが笑顔でそばにいること、心と体が守られていることだと私は思います。

苦しいときは、ひとりで抱え込まなくて大丈夫です。看護師さんや医師、家族、そして同じ経験をした誰かを頼ってください。あなたはもう十分、頑張っています。

まとめ

NICUに入院中の搾乳と授乳は、「母乳」というひとつの答えに向かって必死に頑張る日々でした。

母乳が出ない不安、搾乳の大変さ、直接授乳できないもどかしさ。どれも、経験して初めて分かる苦しさだったと思います。

でもその中で私が学んだのは、母乳が全てではないこと、完璧じゃなくても育児はできるということ。

母乳、ミルク、ドナーミルク——どんな選択であっても、赤ちゃんの成長とママの心身を守るために選んだ道なら、それはすべて正解です。

もし今、NICUで搾乳や授乳に悩んでいる方がいたら、どうか自分を責めすぎず、「できていること」に目を向けてください。

あなたのその一滴、その想いは、ちゃんと赤ちゃんに届いていますよ。

 

※この記事は、一個人の体験記録です。
症状や経過には個人差がありますので、体調や治療については必ず医師・医療機関へご相談ください。